建築業界の次世代にかける想い

建築DXのチャレンジに向けてブレンスタッフ設立当時を振り返る

〇ブレンスタッフ設立まで

大学卒業後に上京して首都圏の設計事務所とソフトウエア開発会社に勤務しました。設計事務所を経てソフトウェアを開発する企業に転職したのは、地元(山形県庄内地方)にUターンする前にソフトウェアについて学びたいと考えたからです。当時の確認申請では既に構造計算ソフトによる計算が認定されるようになっていました。私が入社した企業では、建築の実務経験者が使いやすいソフトウェアを開発していましたが、日本建築センターのお墨付きをもらうために大学の先生と月に1回程度の審査会をおこなっていました。それまで手計算で行っていた荷重や応力計算が新しい基準でシステム化されたことにより、極めて施工に近い、高精度な計算方法・手法が可能になったことは、大変勉強になったと同時に自らの構造設計の概念に大きな影響を及ぼした機会となりました。

私が地元に戻ってきた頃の地方では、設計事務所である程度の経験を積んだら独立しなくてはならないという風潮がありました。しかしながら、独立してすぐは小さな仕事から始めるしかないことから、もどかしい思いをしたものでした。そこで、地方の建築士の能力を発揮できる場を作るため、個人経営の設計事務所の建築士を5人集めて、対等な立場で組織運営する設計事務所を立ち上げました。新しいことにチャレンジするために顧客の地域を首都圏に拡大し、数名の従業員を採用しながら事業規模を拡大していきました。対等な立場の建築士が同じ未来を共有するのは容易ではありませんでしたが、その後は設計事務所の社長を後進に譲り、そこから構造設計と鉄骨製作図を独立させて新たに設立したのがブレンスタッフです。

〇社名の由来

「ブレンスタッフ」という会社名は社内公募により決定したものです。最優秀賞は「brain-staff&仲川」。日本語での発音のしやすさで多くの人達になじんでほしい想いから、ブレイン⇒「ブレン」として、社員全員の会社という想いから個人名を入れずに最終的に「ブレンスタッフ」となりました。

〇今に至るまで

ブレンスタッフ設立当初の構造設計と鉄骨製作図は首都圏企業からの下請け業務として受注していました。そのうちに以前に勤務していた設計事務所の営業担当からお声掛けしていただき、PC製作図事業がスタートしました。事業立ち上げ時は、東京の事業者に社員が長期出張して、そのノウハウを習得しています。木造についても構造設計の仕事でご縁のあった方から勧められ、東京の事業者で社員がノウハウを習得しています。意匠設計業務は地元の山形県庄内地方にライスセンターを新築する際の設計業務をきっかけにスタートしています。また、当時は手書きであった図面作製にいち早くCADを導入し、加えて地域での講習会をおこなうことで業界関係者に全国の地域の中でもいち早くCADの普及が進みました。振り返ってみると、いろんなご縁があって今に繋がっていると思います。

最先端の技術、新しいことにチャレンジしたいという気持ちは今も変わりません。今、建築業界の次世代に向けて、最も強く想うことは、「建築DX」へのチャレンジです。


                                                  2022年7月                                                  

                                                  代表取締役 仲川 昌夫  

新年のご挨拶

謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。

私たちの生活に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症はようやく落ち着きを見せ、徐々に日常を取り戻しつつあります。この間に社会は転換期を迎え、建設業界においてはDXの推進が喫緊の課題となっています。建設業界は人手不足やデジタル化の遅れに直面していますが、今後も建設業界が発展し、お客様に最良の建物をご提供し続けるためには、従来のビジネスモデルや業務プロセスを見直し、業務効率化を図ることが不可欠です。私たちは「建てる前に建てる」をコンセプトにした独自の建築設計マネジメントにより、建築生産プロセスの変革に挑戦しています。建築生産プロセスへのフロントローディング導入を進め、建築関係者が効率的に協働できるようマネジメントに努めてまいります。

人手不足とデジタル化の遅れは地方において更に課題が山積していると考えております。地方の問題は日本全体の問題と考え、BIM導入・活用促進を含む建設DXの推進により、地域と業界の発展に繋がる持続可能な地域づくりに貢献できますよう、地域を支える多くの仲間と共に活動を続けてまいります。

私たちは建設業界の未来ひいては地域の未来に貢献できるよう、社員一丸となって一歩ずつ着実に進んでまいります。
本年も変わらぬご高配を賜りますようお願い申し上げます。

20221月吉日

代表取締役 仲川 昌夫

ご挨拶

一般社団法人 山形県建築士事務所協会
副会長 仲川 昌夫

 令和2年度から副会長に就任いたしました仲川です。就任して一年三ヶ月程が経過しました。新型コロナウイルスが発生して1年半以上が経過し、ワクチン接種率が40%を超えたにも関わらず感染拡大に歯止めが掛からない状況が続いています。副会長就任前とは景色が一変したことで職責を十分に果たしているかを自問自答しながらも、各個人が感染予防をしっかり行うことが最も大切と考え、社員や関係者に感染防止対策の徹底を呼び掛けています。

 新型コロナ禍を通じて仕事の上でも状況が一変し、リモート会議や在宅勤務が当たり前になりつつあります。コロナ終息後に向けてDX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGsを基本とした活動が社会から当然のように求められると考えています。我々が所属する建設業界は、設計者・建設技能者・技術者の大量離職と長時間労働といった構造的な問題を抱えています。人材の確保が年々難しくなる中、労働時間を減らしつつ、建築の品質を確保し向上していくには、DXにより「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する」事が欠かせません。私は設計事務所のDXの基盤はBIMであると考えます。

 建設業界は産業界の中でもデジタル化が遅れていると言われてきました。社会から求められる建築の価値を一層高めていくには、DXによる業務の生産性向上が欠かせません。建築技術と共に情報技術に強い人材のニーズが高まっており、業界・業種の枠を超えた技術・ノウハウの共有と人的なネットワークが今後ますます重要になっていくと思われます。新しい時代を担う山形県内の多くの事務所協会員の皆さんに、激動する社会環境で共生し続けて行く為の変化(進化)に繋がるヒントやキッカケづくりとなる情報を発信していきたいと考えています。

 BIMは建物の3次元モデルに材料・コスト等の属性データを関連付けることで、設計~施工~維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うための手法であり、DXを実現するための基盤です。BIMワークフローにおいてはフロントローディングが重要であり、設計段階に施工段階の情報を取り入れて設計の精度を高めることにより、施工段階の生産性や品質が向上します。そのためには、設計業界のみならず、専門工事業者・施工事業者、IT業界、発注者とのネットワークをより強固に、そして少しずつでも拡大していくことは、今後も事業を継続していくうえで欠かせないものになると思います。景色が変わっても、時代が変わっても、人との繋がりが大きな財産であることに変わることはないでしょう。若い人たちが魅力を感じる業界であり続けられるよう、使命感を持って「建築DX」と「人的ネットワーク」の実現に努めます。

 事務所協会での当面の取組みとしてはBIMや建築デジタル技術に関わる研修会を開催して行きたいと考えています。会員、賛助会員の皆様とともに前進し、コロナ禍後の社会でより良い建築をお客様に提供できるよう活動していきます。

 最後に皆様のご健勝をお祈りし、挨拶といたします。

一版社団法人 山形県建築士事務所協会「会員通信」第11号 寄稿(令和3年9月1日発行)